瑞浪市化石博物館研究報告第46号
江戸時代の貝化石図譜『閑窓録』の研究
- BMFM46-007Matsubara&Kumooka(PDF 7.16MB)
Matsubara & Kumooka (2020) print-version
出版年月日: 2020/3/13 ページ数: 57–102
【論文概要】 江戸時代に刊行された貝化石図譜として知られる耕雲堂灌圃の『閑窓録』を全文翻刻し、古生物学・国文学の観点から研究を行いました。研究の結果、作者の正体は、讃岐国白鳥松原村(現在の香川県 東かがわ市)の俳人で大庄屋の竹内宗助(? – 1816)であることが判明しました。本書で描かれている標本の産地は、北は蝦夷から南は日向にまたがり、主にペルム紀〜第四紀の地層から産した112ロットの化石標本が描かれていることも明らかになりました。さらに、本書に収められている詩歌句の多くは竹と秋を題材としており、貝化石とはほとんど無関係であることも判明しました。すなわち本書は跋文で作者が記しているとおり、「竹石二愛の巻」となっています。『閑窓録』に描かれている標本は残念ながら現存していませんが、画・産地・寄贈者の情報が揃っていることから貝化石は、日本の古生物学史・博物学史にとって、貴重な資料です。