瑞浪市化石博物館研究報告第3号
植物性微化石からみた大阪層群佐保累層・西大寺累層の古環境
- BMFM03-008Matsuoka,1976(PDF 8.56MB)
Matsuoka (1976) print-version
出版年月日: 1976/12/25 ページ数: 99–117, pls. 25–30
奈良盆地北部から北西部にかけて分布する佐保累層・西大寺累層中の海成泥層から,双鞭毛藻,花粉その他の植物性微化石を検出した.双鞭毛藻化石群集はHemicystodi11ium zoharyi の豊産で特徴づけられる群集Aと,Operculodinium, Spiniferitesを主とする群集Bに区分される.一方花粉化石群集はPinus, Fagus, 常緑性Quercus, Ulmus-Zelkovaを主とするも,Lagerstroemia, Liquidambar, Sapium など暖温帯~亜熱帯性の種類も普遍的である. また淡水性緑藻類のPediastrumも検出された.双鞭毛藻化石の群集Aでは,Hemicystodinium zoharyiの多産とTuberculodinium vancampoaeおよびPediastrumの産出から,暖流の影特を強くうける内湾ないし鹹水性沼地域で, 河川の流入のみられる堆積環境が推定される. また花粉化石のLiquidambarやLagerstroemiaの産出も以上の推定を支持すると考えられる. 一方双鞭毛藻化石のHystrichokolpoma rigaudaeの産出は,この化石が前期洪積世にまでしか認められないこと,および花粉ダイヤグラムの様子が田井(1970) による千里山地域での大阪層群のMa 1のものに酷似すること,Liquidambarの産することは,佐保累層・西大寺累層が大阪層群下部に.またそれに含まれる海成泥層がMa 1に属するという従来の見解を支持している. さらに双鞭毛藻化石9種を記載・紹介した.